食欲不振は、食物を摂取したいという生理的な欲求が低下したり、喪失している状態です。
消化器疾患をはじめとしたさまざまな病気や過労、ストレス、薬の副作用、生活のリズムの乱れなど、多くの要因が食欲不振を招きます。
人間関係、仕事のプレッシャーなどの悩みや不安による精神的なストレス、過労、事故、怪我、さらには音、光、温度などの身体的なストレスが続くと、自律神経の交感神経が過剰に刺激されます。
それにより、消化吸収を促進する副交感神経の働きが抑えられ、食欲が起こりにくくなります。
通常、体のエネルギーが不足すると、脳は食事をとってエネルギーを補給するように指令を出します。
しかし、運動不足によって体の活動量が低下すると、補給の必要性が低下するため食欲もわかなくなってしまいます。
また、睡眠不足などによる不規則な生活を続けていると、自律神経が乱れ、胃腸の不調や食欲不振を引き起こします。
アルコールは肝臓で代謝されて解毒されるものです。
しかし、アルコールを飲みすぎる生活を続けていると、肝臓の働きが低下し、吐き気や全身の倦怠感などがあらわれ、食欲もなくなります。
胃や膵臓にも負担がかかり、炎症を繰り返しているうちに機能が低下して、吐き気や食欲不振などを引き起こすこともあります。
加齢とともに運動能力が低下して、運動不足が慢性化することが多くなってきます。
また義歯による噛みづらさや亜鉛の摂取不足による味覚障害など、これらの要因が食欲不振を引き起こします。
胃腸や肝臓、胆のう、膵臓などの消化器に炎症や潰瘍、腫瘍などの疾患が起きたときや、胃下垂・胃腸虚弱により機能が低下したときに食欲が低下しやすくなります。
消化器以外においても、さまざまな臓器の悪性腫瘍、心不全、腎障害、甲状腺機能低下症、脳出血などの脳の疾患、風邪やインフルエンザなどの感染症の他に、神経性食欲低下やうつ病などの精神的な疾患など、多くの疾患が食欲不振の原因となります。
原因の約8割がピロリ菌の感染によるものですが、その他、非ステロイド性抗炎症薬の副作用や慢性的なストレスなども原因になると考えられています。
胃の粘膜が弱まり、炎症が繰り返されて治りにくくなっている状態です。
腹部膨満感、胃もたれ、胃痛、胸やけ、吐き気、げっぷなどの症状が慢性的に繰り返され、食欲不振に陥ります。また、胃潰瘍に進行することもあります。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍は、ピロリ菌や非ステロイド性鎮痛剤、ストレスなどが主な原因で起こると考えられています。
強い胃酸と消化酵素によって胃や十二指腸の粘膜が部分的になくなってしまう病気です。胃潰瘍は食事中から食後にかけてみぞおち周辺に重苦しい痛みが起こりますが、十二指腸潰瘍は早朝や空腹時にみぞおち周辺がシクシクと痛み、食事をとると治まるのが特徴です。どちらも胃もたれや吐き気、食欲不振をともないます。
胃がんは、日本人に非常に多いがんで、それにはピロリ菌の感染率と塩分の多い食生活が関係していると考えられています。
初期はまったくといっていいほど自覚症状がありません。
みぞおちの痛みや膨満感、食欲不振、吐き気といった自覚症状が出てきたころには、病気が進行している場合が多いです。
胃がんが進み、粘膜が破壊されると黒褐色の吐血や下血を起こすようになります。それにともない、貧血症状があらわれることもあります。
風邪のウイルスが侵入すると、体がウイルスを排除しようと免疫機能を活性化させます。
そのため、発熱やだるさ、倦怠感が起こり、消化機能が低下して食欲が減退することもあります。その他、頭痛、頭重感、鼻水、鼻詰まり、咳などの呼吸器症状もあらわれますが、風邪は1週間程度で治るのが一般的です。
夜ふかしをしたり、朝食を抜いたりすると体本来のリズムが崩れ、自律神経のバランスが乱れて食欲が低下します。
1日3食、できるだけ決まった時間にとり、早寝早起きの習慣をつけて、生活のリズムを整えましょう。
とくに食欲不振を招きやすい夏バテを防ぐには、疲れを溜めないことが一番です。
寝る前にぬるめのお風呂につかり、暑くて寝苦しいときは頭部を氷枕で冷やすと、深い眠りが得られて疲れが解消します。
精神的なストレスが続くと、食欲不振に陥りやすくなります。
ストレスの元になっている悩みや不安は、誰かに相談するなどして早めに解決することが大切です。また、家に帰ったら、読書や音楽鑑賞など、自分の好きなことをして気分転換をはかり、短い時間でもリラックスできるひとときを過ごしましょう。
体を動かすと、エネルギーが消費されるだけでなく、気分もすっきりし、自然に食欲がわいてくることも少なくありません。
また、定期的に運動を行うことで生活のリズムも整い、食欲を感じられるようになります。ウォーキングなど、自分のペースでできる運動を続けましょう。
アルコールの飲みすぎは胃や肝臓などに負担をかけ、食欲不振を招きます。
アルコールを飲むときは飲みすぎないように注意をし、週に2日はアルコール抜きの休肝日を設けましょう。
また、空腹状態で飲酒すると胃の粘膜が刺激され胃炎などを引き起こしますので、つまみ類を食べながらゆっくりと飲みましょう。
食欲のないときは、消化の良い食べ物を少しずつ食べることが大切です。
とくに食欲が減退しがちな夏は、量より質に重点を置き、疲労回復に効果的な玄米、豚肉、ウナギ、豆類、ねぎ、山芋などをとり入れましょう。
家族や仲の良い友人とテーブルを囲んだり、食材の配色や盛りつけなどに工夫をすることで、食欲が出てくることもあります。
胃腸の不具合をともなう食欲不振が長引く場合は、内科や胃腸科、消化器科を受診しましょう。まずはその原因を探し、最適な治療法を見つけましょう。